テスト

2020年6月19日金曜日

中堅ソフト開発会社のビジネスの未来  

中堅ソフト開発会社のビジネスの未来  


 1990年のバブル崩壊以降の時代の変化を振り返ると、“2008年のリーマン ショック”は日本の経済にとって決定的な分岐点であった。
そのショックで 世界中が大不況となり、日本の株価は大暴落した。日本の大手企業が軒並み大幅赤字となり、
あっという間に国内消費が冷えこんだために日本の産業界に
大打撃を与えた。
経営者は日本市場の収縮傾向が明確となり、 日本企業は海外でのビジネスを伸長しないとグローバル競争に生き残れないことをやっと自覚させられた。
このことが 日本の“本格的なグローバル化へのトリガー”となった。
 

 そのため人事部門では中国人等の外国人を本格的に採用しはじめ、逆に
 多くの日本人が外国資本の企業で働くようになってきた。IT業界においても
 グローバル化が進展し、私と同じ団塊の世代の仲間も退職後、中国資本の
 IT企業で働く人がいつの間にか増加している。日本と中国とのビジネス上の
 立場も変化が出てきている。今までは日本が中国のお客様の立場であったが、
 これからは反対に中国が日本のお客様の立場になってくる。テレビを
 見ていると、旅行業界では大勢の中国人観光客が大型クルーズ船で博多や
 神戸に寄港し、百貨店や家電店でショッピングを楽しんでいる。日本人が
 中国の動向やニーズを十分に理解することはこれまで以上に大事に
 なってくる。このようにリーマンショックが発生した「2008年」は日本の
 “本格的なグローバル化の元年”となった。

 最近の新聞を見ていると、大手電機メーカーの記事は殆どが“リストラ・
 人員削減”、“日本工場の縮小・閉鎖”、“中国への工場移転”など暗い
 テーマの見出しばかりである。更に円高や電力不足の懸念までが追討ちを
 かけている。グローバルな視点から日本の進むべき方向性を見つけて、早く
 この閉塞的な状況から抜け出さないといけない。日本の財政が数年以内に
 デフォルトに陥ると予言をする辛口のコンサルタントまでいる。しかし
 日本経済の暗くて悲観的な面ばかり見ても仕方ない。ピンチはチャンスだと
 思って、現実を直視しながら前を向いて自分の道を明るく進むしかない。
 “本格的なグローバル化の時代”にはそれに対応したビジネス戦略が必要に
 なる。

 私はITベンダーで、中国や東南アジアに進出する日系製造業の情報システム
 構築の支援を長年担当してきた。また海外職業訓練協会OVTA
 国際アドバイザーとして、海外に駐在員として赴任される方へのキャリア
 コンサルティングの仕事に携わってきた。中国での仕事の内容としては
 「中国現地法人のIT上流工程の仕様作成」のための人材育成であった。
 具体的には「現地法人のIT上流工程の仕様作成」のプロセスは以下のような
 内容である。
 (1)ビジョンの確立:「日本経営品質賞」の「組織プロフィール」を活用
  自社の“現状とあるべき姿”を明確にする。“顧客・競争環境・経営資源・変革”の認識 
   
自社の“変革すべき部分”と“堅持する部分”の切り分け。儲かる仕組み作りの創造。
   
良い経営は他人は教えてくれない、自分で悩みながら考えるしかない。
   
「日本経営品質賞」は短期的な“納期やコスト”だけではなく、長期的な
   
顧客視点の“成熟度”の向上がより求められる。
 (2)実現方法の具体化:「バランススコアカード」を活用
  “SWOT分析”で“重要成功要因”を決めて、“戦略MAP”を作成する。
 (3)実現方法の数値化:「バランススコアカード」を活用
  “業績評価指標”を設定し、アクションに結びつける。
 (4)目標達成の具体化:「プロジェクトマネジメント」を活用
  要件を確認して、“プロジェクトマネジメント”を計画を作成する。 

 米国流のグローバルスタンダードな手法である「日本経営品質賞
 (マルコムボールドリッジ賞)」と「バランススコアカード」と
 「プロジェクトマネジメント」を使うと分かり易く可視化されており、
 “理屈好きで、米国好き”の中国人スタッフには好評で、打合せが
 スムースに進行する。

 日本の上場企業の中で、もはや日本国内だけでオペレーションしている
 企業は存在しない。必ず海外に拠点を持っている、特に殆どの日本企業が
 中国に現地法人を持っている。IT業界でも日本と中国は一衣帯水で
 切っても切れないビジネス関係にある。ここでは“中堅ソフト開発会社の
 中国へのオフショア開発ビジネスの未来”について、徒然なるままに独断と
 偏見を交えて分析を試みる。

 

1 中国への単純なオフショア開発ビジネスは縮小していく

1-1
日本でのソフト開発ビジネスは縮小する日本国内での
   
ソフト開発会社の業績は2007年をピークに低迷している。
   
低迷の原因としてはリーマンショックの影響が大きい。
   
リーマンショック以降、日本企業の責任者は景気の
   
先行きが読めないために“大型のIT投資”を控えている
    
からである。
 

更には2011年には東日本大震災やタイの洪水等の想定外の
    
事態も発生し、更に景気回復に水をかけている。
   
ソフト開発会社としては日本での受注はあまり伸長が望めない。
  
今後は成長市場の中国などアジア地域での受注拡大を検討する必要がある。
  
中堅ソフト開発会社は「国内だけからの受注」から「海外からの受注」にも対応できる
  
社内体制にリストラクチャリングする必要がある。

 中堅ソフト開発会社は現状のままでは生き残れなくなっており、
 
下記の二者選択が迫られている。
 (1)“寄らば大樹の陰で”、今まで通りの大手ITゼネコンの下請を続けるか、
 (2)“自社独自で”新しいビジネスモデルを構築するか
 
 大手ITゼネコンは人件費などの固定費を削減しながら利益をやり繰りしながら
 なんとかしのいでいる状況である。大手ITゼネコンが中堅ソフト開発会社と
 一緒に戦略的なビジネスモデルを検討したり、育成する余裕はない。また大手
 ITゼネコンは大量の従業員を抱えているため、リスクを伴う急激な戦略変更
 などの大きな方向転換はむつかしい。
 一方中堅ソフト開発会社は、意欲と技術力さえあれば、独自に“柔軟性と
 機動性”を発揮して“クラウドサービス”等を活用すれば大きなコストと
 時間をかけずに、画期的なサービスを提供できる時代になってきた。新しい
 ビジネスモデルとして“システム監査の視点”を強化してコンパクトな
 ソリューションも考えられる。しかし中堅ソフト開発会社は“営業力や
 マーケティング力”が弱い。市場がある程度大きくなると大手ITゼネコンが
 参入してくるリスクが出てくる。

 グローバル時代の“勝者は一人”だけで、“残りは全て敗者”である。
 “バブル時代”は同業他社と同じことをやっておればそれだけで利益を確保
 できたが、“グローバルかつ不況の時代”は、同業他社と同じことをやって
 いても利益は確保できない。苦しくとも他社と異なる“独立独歩”のやり方を
 追求しないと生き残れない。
 

1-2 日本のIT業界の問題は下請構造にある

 私はITベンダーに勤務していたが、その時に建設業を10年間ほど担当していた経験がある。IT業界と建設業界とは大変よく似た構造(請負契約や下請制度)であるのに驚いた。
しかし、よく観察すると“短い歴史しか持たないIT業界”と
“長い歴史を持つ建設業界”では成熟度にたいへん大きな
開きがある。それは建設業界は不況産業と言いわれながらも豊富な経験による知恵が蓄積されているからである。建設業界がIT業界と比較して優れている所は下記の点である。

 (1) 「設計」と「施工」の工法は標準化されている。
 (2) 見積基準が確立しており、人件費や建設材料の価格も標準化されている。
 (3) WBS(ワークブレークダウンストラクチャー)毎の進捗やコストも
 (4) 専門家制度が制度化されており、社会的な評価も高い。
 (5) 「ノウハウ」と「作業」が明確に区別できている。
 (6) 建設業は法律で規制され、国交大臣又は都道府県知事による認可事業
  である。 ルール違反があると法律的に罰則(ペナルティ)が科せられる。
  IT業界のビジネスには役所の認可は不要である。

 IT業界にもゼネコン業界と同じように下請制度がある。大手ソフト会社は
 受注した案件を子会社や下請にそのまま業務委託する。その時に受注金額の
 “相当程度の粗利”を確保してから下請に発注する。“相当程度の粗利”
 とは「管理費、リスク、利益等」である。さらに受注企業はそれぞれ
 “相当程度の粗利”を確保しながら再度下請に業務を委託していく。
 このような下請の多段階化が定着している。元請となる大手ソフト会社は
 “技術力・ブランド力・信用力”があり仕事を受注できるが、
 “ブランド力・信用力”がない中堅ソフト開発会社が仕事を得るためには、
 必然的にこの下請構造に依存せざるを得ない状況となっている。そのために
 大手ソフト会社の直系の子会社以外はジリ貧になる。

 

1-3本来は、元請と下請の契約関係は「WIN-WINの関係」でなくてはいけない。

 当然ではあるが、元請と下請の契約関係では安く仕事を請負う会社に仕事が流れてしまう傾向がある。
結果的にプロジェクトの環境は悪くなり、 メンバーの
モチベーションが下がり、プロフェッショナルとしての重要な人材育成が出来ない状態となる。

これは最終的には日本のIT業界の技術力や 品質の低下に繋がっている。
プロジェクトマネジメントの本来の考え方では
 “WBS”に対して資源見積(RESOURCE ESTIMATION)のプロセス
 最適のプロフェッショナル人材を世界中から選べるはずだが、日本の
 下請構造ではこの一番大事な資源見積(RESOURCE ESTIMATION)の
 プロセスがスキップされてしまっている。そのためにプロフェッショナル
 同士の技術力の競争ではなく、ファンクションポイント法をベースに
 した単なるコストの競争になってしまっている。しかしこのような
 内向きの下請構造はオープンでフェアな競争が前提のグローバルビジネス
 では通用しない。日本のIT業界が世界でシェアを拡大するためには、日本の
 下請構造は根本的な改善を要する。日本のIT業界はまずは「内なる
 グローバル化」が必要である。

1-4
中国は現在オフショア開発の「委託先・発注先」であるが、今後は中国は
 「重要な顧客」になる。

 中国は現在はオフショア開発の「委託先」であるが、数年後には中国は
 「重要な顧客」になる。その理由は下記の通りである。
 (1) 市場としての中国企業のIT市場は確実に拡大している。
  日系の現地法人も多く、そこには現地法人としてのIT開発・運用の
  ニーズがある。日系企業の日本本社からの発注でなく、中国の現地法人
  からの発注が多くなっている。業種的には製造業だけでなく、金融や
  サービス業も中国の拠点を増強している。中国を拠点に中国で生産し
  中国だけで販売するのではなく、全世界に販売している。
 (2)中国の人件費は急激に上昇しており、反対に日本の人件費は上昇して
  いない。中国企業は国内の人件費の上昇への対策で、ベトナムや
  ミャンマーにオフショアし始めている
 (3)今後中国の通貨である元のレートは上昇し、日本の通貨である円の
  レートは下がる可能性がある。
 (4)中国はITに関する「技術的ノウハウ」は持っているが、
  「業務ノウハウ」は十分でない。 日本の中堅ソフト開発会社の
  「業務ノウハウ」は中国で市場価値がある。 そのためには、中堅ソフト
  開発会社では業種・業務の「下流工程」だけでなく、「上流工程や超上流
  工程」の経験・ノウハウが重要になる。またシステム監査やセキュリティ
  の実務的な経験・ノウハウも必要である。

 人脈・コネ社会の中国市場では、儲かる仕組みを検討する場合、日本人
 だけで戦略を考えても土台無理である。これからは現地の事情に精通した
 中国資本や現地の業界人材を巻き込んだ連携が必要となる。時間は
 かかるが、人脈つくりが大切である。またここは清濁併せ呑む度量
 大事かもしれない。中堅ソフト開発会社は中国市場で自社の独自
 ソリューションで、最終ユーザーとダイレクトにコンタクトできる
 人脈作りも肝心である。

1-5
 中国でのビジネス環境の変化への迅速な対応が必須である。

 IT業界の環境変化は著しい。特に中国側の変化は日本の10倍のスピードである。
 2008年のリーマンショック以前のビジネスモデルやIT導入事例はすでに
 陳腐化しており参考にならない。
 例えば、2007年にPMAJ「関西P2M実践事例研究会」の中で「オフショア開発」
 の研究に参加した。具体的にはPMAJの「関西P2M実践事例研究会」の中に
 「オフショア分科会」が設立された。
 その分析結果については、2007年(平成19年)PMAJの「関西P2M実践事例
 研究会」の報告書の中に「オフショア開発の事例研究」というタイトルで
 まとめられた。しかし、作成当時は参考になったが、現在ではすっかり
 外部環境・内部環境共に変わってしまっていて殆ど参考にならない。
 中国では様々な計画を立案しても1年で陳腐化してしまう。中国に進出して
 いる日系企業の現地法人は中国の急激な変化への対応に大変苦慮している。
 中堅ソフト開発会社では中国の急激な環境変化にフレキシブルかつ
 機動的に対応できる能力が必要である。
 http://www.pmaj.or.jp/library/open/regular/kns20081010.pdf
 
2.
中堅ソフト開発会社は「内なるグローバル化」が求められている。

2-1 IT業界のビジネスパーソン個人としてのグローバルへの化対応

 中国でのビジネスは、日本人だけで戦略を考えても現実的でない。時間は
 かかるが現地での人脈つくりが大切である。また儲かる仕組み
 なければ初めから中国市場に参入するべきでない。優位性を持たない企業も
 中国に進出すべきではない。何の優位性も持たない企業は中国側も歓迎しない。
 まただれも真似できない独創的なビジネスモデルでないと事業の成功は
 おぼつかない、さもなければ価格競争に陥りジリ貧である。

 進出する際には日本企業が不慣れな中国市場で“100%の独資で市場開拓
 するのは無理がある。特に経営資源に限りがある中堅ソフト開発会社には
 信頼できる中国側のパートナーが必要になる。ここでは中国でIT市場開拓の
 ために中国企業と日本企業の合弁企業を設立した場合を前提としてみる。

 グローバルビジネスではごく少数の勝者と大多数の敗者に明確に分かれる、
 このようなビジネス環境で信頼できるのは自分自身だけである。
 そこには終身雇用制度も年功序列制度もない。果たしてこのようなことが
 できるだろうかという疑問はあるが、1人が何でもこなす
 プロフェッショナルを想定する。中国の責任者は日本と比べて若く、30代が
 多い。日本も若者がなるべく早くビジネスにチャレンジした方がよい。
 個人として中国ビジネスで生きていける知識とノウハウを身につける
 必要がある。ここでは個人をベースにして話を進める。

 

(1)プロフェッショナルとしての力量をつける

例えばプロジェクトマネジャーの場合は、欧米も日本もプロジェクトマネジャーはプロフェッショナルであることを求められる。
しかし、日本と欧米ではその意味が異なる。プロフェッショナルはどんなものかと英語辞書を引いてみると、
A  professional is a person who is paid to undertake a specialized set of tasks and to complete them for a fee.

と書いてある。事前に“契約した仕事”をきっちりこなして“対価として報酬”をもらうのが「契約型職業人」である。
「契約型職業人」に能力を存分に発揮してもらうには、“プロフェッショナル個人の責任と権限”を明確にすることが必要になる。
更に人事の面では、終身雇用制度や年功序列ではなく、
“雇用の流動性と能力主義”の適用が前提となる。
「契約型職業人」は“低コンテキスト”の企業風土で力を発揮する。
 
(2)
異文化コミュニケーション能力や中国語会話能力で中国人とのネットワークを作る。

 中国人と付き合うには「異文化コミュニケーション能力」が重要である。
 どこの国の人でも、仲良くなるには酒を飲んだり、世間話をするのが最良の
 方法である。その時に基本となるのは中国語会話能力である。やはり言葉が
 通じないと、意思疎通ができないので仲良くなれない。中国語学習には
 いくつかの厚い壁がある。日本語と中国語は同じ漢字を使うので似てる点も
 あるが、異なる点の方が多い。まず日常会話で使う基本的な動詞が日本語の
 単語と大きく異なる。食べる⇒吃chi 、飲む⇒喝he、見る⇒看kan
 聞く⇒聴ting、歩く⇒走zou、と何故か異なるので、筆談が通用しない。
 発音は更に難しい。最初は英語の「abc」である「ボフォモフォ、 bpmf」から
 始まるが、単調で全く面白くもおかしくもなくなかなか根気が続かない。
 中国語にはピンインというものが出てくるがこれも曲者である。中国では
 子供でもできるそうであるが日本人にはその発音が難しい。中国人は
 基本的に口や舌の使い方が異なる。日本人にとって最もむつかしい発音は
 「そり舌音(ch,zh,sh,r)」である。一昔前は「巻き舌音」とも
 呼ばれていた。日本語の発音にはまったく存在しない音のため苦戦する
 ことになる。実は多くの中国人もこのそり舌音が発音できない人たちが
 たくさんいるそうだ。英語の発音の知識で読んでも中国語にならない。
 私の場合は中国語の発音(ピンイン)が分からないまま挫折となってしまっている。
 http://www.pmaj.or.jp/online/0810/p2m_kansai.html
 性格や価値観については中国は“様々な民族”から構成されているので
 一言で括るのはむつかしい。中国は一つの国であるが中国だけでも
 グローバル社会である。コンテキストの面から見ると、日本と中国は同じ
 高コンテキスト文化であるが、日本人の性格は集団主義、中国人は個人主義が
 多い傾向がある。米国人は低コンテキストで個人主義である。
 コミュニケーション能力が必須である。

(3)
中国人の生活に入り込み、腰を据えてビジネスをする能力(現地化力)をつける。

 中国でビジネスの信頼関係を構築できるのはどんなタイプの人材なのかを
 考えてみる。 それは“中国に腰を据えて住みつき、中国人と腹を割って
 交渉が出来る人” である。引用が戦前になり古くて申し訳ないが、
 具体的な名前を挙げると“内山完造氏”(1885-1959年) のような人では
 ないかと思う。内山完造氏の経歴は、大阪の船場で 丁稚奉公の後、
 裸一貫で中国に渡り、“参天堂の大学目薬”の販売で中国全土を歩き回る。
 この“参天堂の大学目薬”の販売で中国全土を歩き回るやり方は、
 現在絶好調の“韓国のサムスンやLG”が新興国で実践しているやり方は
 “参天堂の大学目薬のビジネスモデル”と同じものである。日本企業は
 現地化力で韓国に負けている。内山完造氏はその後上海に内山書店を開いて
 魯迅や郭沫若などの日中文化人と友好を深め、中国の革命運動を援助した
 日中友好の草の根の運動家である。詳細は下記のホームページの記述を
 参照されたい。http://www.uchiyama-shoten.co.jp/company/history.html

(4)
郷に入れば郷に従えで、“華人・華僑のやり方”を取り入れる

 中国ビジネスのプロフェッショナルである “華僑のビジネス”の本質を
 分析してみる。著作“中国ビジネスのリスク・マネジメント(著者杉田俊明氏)”
 によれば・・・「華人・華僑は豪快に見えても、事業を賭けの対象には
 決してしない。彼らは責任者としての天才的な先見性を持っており、比較的
 正確な事業投資を行っている。そして一度に多大な投資を行うことはなく、
 上手く行けば徐々に追加投資を行うのである。豪快に見えていたとしても、
 大変周到な計画を持って投資しているのである。・・・」。これをよく読むと
 これは正に、日本の経営戦略の教科書通りの定石である。中国流ではあるが、
 何か変わった手を打っている訳ではない。豪快どころか石橋を叩いて渡っている。
 しかし、このような華人・華僑のやり方を日本人のビジネスパーソンが
 すぐに真似出来るわけではない。特に“責任者としての天才的な先見性”は
 逆立ちしても真似できない。“華人・華僑のやり方”と“日本人の技術と
 ノウハウ”をミックスしたやり方は検討に値する。

(5)
中国ビジネスでのプロフェッショナルとしての豊富な経験を持つ

 中国の現地法人で働く日本人は、通常日本国内では組織の中の歯車の一つ
 であり、企業の責任者としての苦労を体験していないことが多い。ところが
 現地法人では急に責任者となり重大な意思決定をする立場になる。日本で
 経営全体のマネジメントの十分な経験がないのに、いきなり現地法人で
 責任者になっても失敗することは目に見えている。やはり “豊富な経験”が
 大切である。そのために中国への赴任前に、日本で十分な専門の研修”を
 受講させる必要があるが、残念ながら十分な事前の研修を受けてくる人は少ない。
 日本には“海外職業訓練協会OVTA”や“グローバル人材育成センター”
 のような様々なグローバルビジネスの研修機関がある。そのカリキュラム等
 を活用すべきである。

(6)
中国人スタッフの士気を高め、能力を引き出す

 “中国企業と日本企業の合弁”の現地法人では、若くて優秀な中国人スタッフは
 大勢いる。しかし、日系企業は昇進が遅いこと、管理職ポストにつきにくい
 ことから不人気である。中国人は士気が高ければ信じられないくらい“頼りに
 なり力を発揮する”が、士気が低いと信じられないほど“無気力”になる。
 当たり前のことであるが、意欲や能力のあるものにはドンドン挑戦する機会を
 与え、“やる気や能力”に応じて、給料も昇進も青天井で報われるような
 魅力のある中国流の人事評価制度を整備する必要がある。

 以上のように、中国でIT市場を開拓するには、今までとは異なる発想や
 リストラクチャリングが必要になる。韓国サムスングループが実践していると
 言われている“ブルーオーシャン戦略(Blue Ocean Strategy)”が指摘
 しているように、「利益なき血みどろの戦いが繰り広げられる既存の市場を
 抜け出し、競争自体を無意味なものにする未開拓な市場を生み出さないと
 生き残れない。」・・・これが現実である。ともかく地獄である
 “Red ocean”から脱出しないといけない。

最後に。
 日中経済は相互依存の補完関係で、日本経済の発展は中国経済の発展に依存
 している。中堅ソフト開発会社の技術やノウハウは中国のIT業界で今後も
 重要な役割を占めてくると思われる。グローバル競争はごく少数の勝者と
 残りの大多数の敗者に分ける。そこでは生き残れるかどうかは企業規模は
 無関係である。生き残るには自分の価値を高め、世界から信用される独自の
 経験やスキルに裏打ちされたソフト開発手法を確立しなければいけない。
 中堅ソフト開発会社がグローバルなBPRで脱皮して中国ビジネスで元気を
 取り戻し、日本の活性化に貢献する日が来るのを期待したい。
 文中に誤字脱字、不適切な点、正確でない記述や論理矛盾もあるかと思うが
 ご容赦願いたい。 
 以上
 

1-2 日本のIT業界の問題は下請構造にある

 私はITベンダーに勤務していたが、その時に建設業を10年間ほど担当していた経験がある。IT業界と建設業界とは大変よく似た構造(請負契約や下請制度)であるのに驚いた。
しかし、よく観察すると“短い歴史しか持たないIT業界”と
“長い歴史を持つ建設業界”では成熟度にたいへん大きな
開きがある。それは建設業界は不況産業と言いわれながらも豊富な経験による知恵が蓄積されているからである。建設業界がIT業界と比較して優れている所は下記の点である。

 (1) 「設計」と「施工」の工法は標準化されている。
 (2) 見積基準が確立しており、人件費や建設材料の価格も標準化されている。
 (3) WBS(ワークブレークダウンストラクチャー)毎の進捗やコストも
 (4) 専門家制度が制度化されており、社会的な評価も高い。
 (5) 「ノウハウ」と「作業」が明確に区別できている。
 (6) 建設業は法律で規制され、国交大臣又は都道府県知事による認可事業
  である。 ルール違反があると法律的に罰則(ペナルティ)が科せられる。
  IT業界のビジネスには役所の認可は不要である。

 IT業界にもゼネコン業界と同じように下請制度がある。大手ソフト会社は
 受注した案件を子会社や下請にそのまま業務委託する。その時に受注金額の
 “相当程度の粗利”を確保してから下請に発注する。“相当程度の粗利”
 とは「管理費、リスク、利益等」である。さらに受注企業はそれぞれ
 “相当程度の粗利”を確保しながら再度下請に業務を委託していく。
 このような下請の多段階化が定着している。元請となる大手ソフト会社は
 “技術力・ブランド力・信用力”があり仕事を受注できるが、
 “ブランド力・信用力”がない中堅ソフト開発会社が仕事を得るためには、
 必然的にこの下請構造に依存せざるを得ない状況となっている。そのために
 大手ソフト会社の直系の子会社以外はジリ貧になる。

 

1 中国への単純なオフショア開発ビジネスは縮小していく

1-1
日本でのソフト開発ビジネスは縮小する日本国内での
   
ソフト開発会社の業績は2007年をピークに低迷している。
   
低迷の原因としてはリーマンショックの影響が大きい。
   
リーマンショック以降、日本企業の責任者は景気の
   
先行きが読めないために“大型のIT投資”を控えている
    
からである。

更には2011年には東日本大震災やタイの洪水等の想定外の
    
事態も発生し、更に景気回復に水をかけている。
   
ソフト開発会社としては日本での受注はあまり伸長が望めない。
  
今後は成長市場の中国などアジア地域での受注拡大を検討する必要がある。
  
中堅ソフト開発会社は「国内だけからの受注」から「海外からの受注」にも対応できる
  
社内体制にリストラクチャリングする必要がある。

 中堅ソフト開発会社は現状のままでは生き残れなくなっており、
 
下記の二者選択が迫られている。
 (1)“寄らば大樹の陰で”、今まで通りの大手ITゼネコンの下請を続けるか、
 (2)“自社独自で”新しいビジネスモデルを構築するか
 
 大手ITゼネコンは人件費などの固定費を削減しながら利益をやり繰りしながら
 なんとかしのいでいる状況である。大手ITゼネコンが中堅ソフト開発会社と
 一緒に戦略的なビジネスモデルを検討したり、育成する余裕はない。また大手
 ITゼネコンは大量の従業員を抱えているため、リスクを伴う急激な戦略変更
 などの大きな方向転換はむつかしい。
 一方中堅ソフト開発会社は、意欲と技術力さえあれば、独自に“柔軟性と
 機動性”を発揮して“クラウドサービス”等を活用すれば大きなコストと
 時間をかけずに、画期的なサービスを提供できる時代になってきた。新しい
 ビジネスモデルとして“システム監査の視点”を強化してコンパクトな
 ソリューションも考えられる。しかし中堅ソフト開発会社は“営業力や
 マーケティング力”が弱い。市場がある程度大きくなると大手ITゼネコンが
 参入してくるリスクが出てくる。

 グローバル時代の“勝者は一人”だけで、“残りは全て敗者”である。
 “バブル時代”は同業他社と同じことをやっておればそれだけで利益を確保
 できたが、“グローバルかつ不況の時代”は、同業他社と同じことをやって
 いても利益は確保できない。苦しくとも他社と異なる“独立独歩”のやり方を
 追求しないと生き残れない。

 

 1990年のバブル崩壊以降の時代の変化を振り返ると、“2008年のリーマン ショック”は日本の経済にとって決定的な分岐点であった。
そのショックで 世界中が大不況となり、日本の株価は大暴落した。日本の大手企業が軒並み大幅赤字となり、
あっという間に国内消費が冷えこんだために日本の産業界に
大打撃を与えた。
経営者は日本市場の収縮傾向が明確となり、 日本企業は海外でのビジネスを伸長しないとグローバル競争に生き残れないことをやっと自覚させられた。このことが 日本の“本格的なグローバル化へのトリガー”となった。

 

 そのため人事部門では中国人等の外国人を本格的に採用しはじめ、逆に
 多くの日本人が外国資本の企業で働くようになってきた。IT業界においても
 グローバル化が進展し、私と同じ団塊の世代の仲間も退職後、中国資本の
 IT企業で働く人がいつの間にか増加している。日本と中国とのビジネス上の
 立場も変化が出てきている。今までは日本が中国のお客様の立場であったが、
 これからは反対に中国が日本のお客様の立場になってくる。テレビを
 見ていると、旅行業界では大勢の中国人観光客が大型クルーズ船で博多や
 神戸に寄港し、百貨店や家電店でショッピングを楽しんでいる。日本人が
 中国の動向やニーズを十分に理解することはこれまで以上に大事に
 なってくる。このようにリーマンショックが発生した「2008年」は日本の
 “本格的なグローバル化の元年”となった。

 最近の新聞を見ていると、大手電機メーカーの記事は殆どが“リストラ・
 人員削減”、“日本工場の縮小・閉鎖”、“中国への工場移転”など暗い
 テーマの見出しばかりである。更に円高や電力不足の懸念までが追討ちを
 かけている。グローバルな視点から日本の進むべき方向性を見つけて、早く
 この閉塞的な状況から抜け出さないといけない。日本の財政が数年以内に
 デフォルトに陥ると予言をする辛口のコンサルタントまでいる。しかし
 日本経済の暗くて悲観的な面ばかり見ても仕方ない。ピンチはチャンスだと
 思って、現実を直視しながら前を向いて自分の道を明るく進むしかない。
 “本格的なグローバル化の時代”にはそれに対応したビジネス戦略が必要に
 なる。

 私はITベンダーで、中国や東南アジアに進出する日系製造業の情報システム
 構築の支援を長年担当してきた。また海外職業訓練協会OVTA
 国際アドバイザーとして、海外に駐在員として赴任される方へのキャリア
 コンサルティングの仕事に携わってきた。中国での仕事の内容としては
 「中国現地法人のIT上流工程の仕様作成」のための人材育成であった。
 具体的には「現地法人のIT上流工程の仕様作成」のプロセスは以下のような
 内容である。
 (1)ビジョンの確立:「日本経営品質賞」の「組織プロフィール」を活用
  自社の“現状とあるべき姿”を明確にする。“顧客・競争環境・経営資源・変革”の認識 
   
自社の“変革すべき部分”と“堅持する部分”の切り分け。儲かる仕組み作りの創造。
   
良い経営は他人は教えてくれない、自分で悩みながら考えるしかない。
   
「日本経営品質賞」は短期的な“納期やコスト”だけではなく、長期的な
   
顧客視点の“成熟度”の向上がより求められる。
 (2)実現方法の具体化:「バランススコアカード」を活用
  “SWOT分析”で“重要成功要因”を決めて、“戦略MAP”を作成する。
 (3)実現方法の数値化:「バランススコアカード」を活用
  “業績評価指標”を設定し、アクションに結びつける。
 (4)目標達成の具体化:「プロジェクトマネジメント」を活用
  要件を確認して、“プロジェクトマネジメント”を計画を作成する。 

 米国流のグローバルスタンダードな手法である「日本経営品質賞
 (マルコムボールドリッジ賞)」と「バランススコアカード」と
 「プロジェクトマネジメント」を使うと分かり易く可視化されており、
 “理屈好きで、米国好き”の中国人スタッフには好評で、打合せが
 スムースに進行する。

 日本の上場企業の中で、もはや日本国内だけでオペレーションしている
 企業は存在しない。必ず海外に拠点を持っている、特に殆どの日本企業が
 中国に現地法人を持っている。IT業界でも日本と中国は一衣帯水で
 切っても切れないビジネス関係にある。ここでは“中堅ソフト開発会社の
 中国へのオフショア開発ビジネスの未来”について、徒然なるままに独断と
 偏見を交えて分析を試みる。

以上

 

 


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