私はITベンダーに勤務していたが、その時に建設業を10年間ほど担当していた経験がある。IT業界と建設業界とは大変よく似た構造(請負契約や下請制度)であるのに驚いた。
しかし、よく観察すると“短い歴史しか持たないIT業界”と
“長い歴史を持つ建設業界”では成熟度にたいへん大きな
開きがある。それは建設業界は不況産業と言いわれながらも豊富な経験による知恵が蓄積されているからである。建設業界がIT業界と比較して優れている所は下記の点である。
(1) 「設計」と「施工」の工法は標準化されている。
(2) 見積基準が確立しており、人件費や建設材料の価格も標準化されている。
(3) WBS(ワークブレークダウンストラクチャー)毎の進捗やコストも
(4) 専門家制度が制度化されており、社会的な評価も高い。
(5) 「ノウハウ」と「作業」が明確に区別できている。
(6) 建設業は法律で規制され、国交大臣又は都道府県知事による認可事業
である。 ルール違反があると法律的に罰則(ペナルティ)が科せられる。
IT業界のビジネスには役所の認可は不要である。
IT業界にもゼネコン業界と同じように下請制度がある。大手ソフト会社は
受注した案件を子会社や下請にそのまま業務委託する。その時に受注金額の
“相当程度の粗利”を確保してから下請に発注する。“相当程度の粗利”
とは「管理費、リスク、利益等」である。さらに受注企業はそれぞれ
“相当程度の粗利”を確保しながら再度下請に業務を委託していく。
このような下請の多段階化が定着している。元請となる大手ソフト会社は
“技術力・ブランド力・信用力”があり仕事を受注できるが、
“ブランド力・信用力”がない中堅ソフト開発会社が仕事を得るためには、
必然的にこの下請構造に依存せざるを得ない状況となっている。そのために
大手ソフト会社の直系の子会社以外はジリ貧になる。
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